2008年02月06日

Dexter's Tune

1990年の映画「レナードの朝」(原題はAwakenings。複数形なのは二重の意味が込められている)で、終盤のこの上なく美しく哀しいダンスの場面に流れる挿入曲「Dexter's Tune」が好きだ。個人的には映画音楽(映画ならではの音楽、として)の最高傑作としても過言ではないと思う。
作曲は職人芸が光るランディ・ニューマン。公開時は見過ごしてしまい、初めてビデオで観たとき既にサウンドトラックは廃盤になっていたが、あまりにも気に入ったので彼のボックスセットをこの一曲のために買ったものだった。

観た方なら誰もが忘れないだろう。いわゆる「難病もの」のこの映画でもっとも心を揺さぶられる場面である。
患者を演じるロバート・デ・ニーロ(迫真の演技。この頃のデ・ニーロは本当に凄かった)と相手役のペネロープ・アン・ミラー(他の映画であまり見ない顔だが、主にTVシリーズで活躍している女優らしい)が食堂で手を取り合って踊るシーンは、静謐で乾いた緊張感溢れる美を湛えており、「ああ、この映画はもう終わるのだ」という予感に震えながら観るほかない。
一幅の絵画のようでありながら、まったく映画にしかなし得ない奇跡のひとつだとさえ思う。



先日、海外の楽譜サイトを検索していてこの曲の楽譜がたまたま見つかった。楽譜集に収録されているが、単曲でも購入できるという。

Dexter's Tune Sheet Music and Guitar Tab Downloads & Songbooks at Musicnotes.com

上のYouTubeビデオの演奏者らほど達者ではないものの耳コピで自分でもそこそこ弾けるようになってはいたが、オリジナルの譜面にも興味はあるし、カード決済可能で4.95ドル(独自フォーマットのシートをプリンタに直接出力する仕組みだ)であれば高くはない。
ということで買ってみた。まったくいい時代になったものだ。インターネット万歳。

Dexter'sTune.jpg終始テンポ・ルバートで奏でられるこの曲は病から回復した患者のひとり(デクスター)が弾くという想定で、もともと難度の高い曲ではないが、改めて譜面を見ると2度・9度を多用した音の集散が面白い。たどたどしい印象を与えつつ、実はしっかり計算された配置がされているという感じ。
映画のあの雰囲気をうまく醸し出すのは結構難しい。でも本当にいい曲だ。

追記:
YouTubeにはこの場面だけの切り出しもアップされているが、映画本編を未見の方は観るべきではない(ただのシリー・ウォークにしか見えないだろう)。最初から流れを追って、デ・ニーロの蝶ネクタイの意味などを痛切に感じ取ってほしい。

再追記:
実際にピアノで楽譜通りに弾いてみたが、映画の中で弾かれている音とは若干違う。YouTubeのピアニストらの耳コピーの方が実演に近いと思う。
posted by NA at 05:33| 東京 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
NAと、原題も挿入したいです。
Posted by BlogPetのめち at 2008年02月06日 09:23
私は現在40歳のサラリーマンです。今から20年前にイギリスに留学していたころ、そのときつきあっていた彼女に誘われて町の映画館にAwakeningsを観に行きました。その時聞いたDexter's tuneが忘れられず、しかしサントラは買いそびれてしまい、最近になってiTunesに登録されているDexter's tuneを聞きました。感動が蘇ってきて、思わず涙を流してしまいました。2008年の今でも良いと曲だと思って下さる方がいるというのは幸せなことです。この曲は本当に名曲だと思います。
Posted by Lotus Esprit at 2008年04月13日 21:38
Lotus Espritさん、こんばんは。
Dexter's Tuneは単独で聴いてももちろんいい曲なのですが、映画の文脈の中でより光を放つ音楽であることは間違いないでしょう。それがさらに留学時代の思い出と結びついているのであれば感動も一入と思います。

「レナードの朝」は映画館で見知らぬ他人の気配と共に観るべき作品だった、と今でも後悔しています。DVDで観てももちろん名作に違いないのですが、デ・ニーロの凄絶な演技に隣の観客が息を呑む様子までは再現してはくれません。
今更再上映されるはずもないので、DVDなどを通じてこの作品に親しむ人がひとりでも増えることを願うばかりです。
Posted by NA at 2008年04月15日 04:16
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