2007年10月21日

ヘンツェ「ルプパ」

ヘンツェのオペラ「ルプパ――ヤツガシラと息子の愛の勝利」(演奏会形式)を聴きに行く。リニューアル後のサントリーホールに行くのはこれが初めてだが、正直「どっか変わったの?」という感じだった。別に一聴衆としては以前から何の不満もなかったから、これでいいのかもしれない。

ヘンツェについては三島の「午後の曳航」をオペラ化した人、というぐらいの知識しかなかった。英語版WikipediaのHans Werner Henzeによるとかなり多作な作曲家のようだが、やはり創作の中心が現代オペラというのはなかなか食指が動かない。だが「最後のオペラ作品」という触れ込みに、これはちょっと聴いておこうかな、と心が動いた。きっと再演は難しい作品だろうし。

しかし、楽曲は想像していたよりもずっとオーソドックスだった。もちろん和声は協和音とは無縁で楽器編成も打楽器を多用するなど、20世紀より前のドイツ・イタリアオペラからは大きくかけ離れているが(当然か)、「ヴォツェック」以降の作品としてはむしろ保守的と言っていいかもしれない。カリカチュアされた人物らが活躍する童話仕立ての台本も含め、極めて伝統的な音楽劇という感じを受けた。

第一部は若干眠気を誘う音楽だったが(少し落ちた)、キャラクターが揃ってドラマが動きだす後半の第二部は大変楽しめた。主要キャストを見栄えのよい海外勢で固めたのも奏功していたが、東京混声の八人による群衆役などのアンサンブルがまた絶妙のアシスト。この舞台の成功に大いに貢献していたと思う。
オペラの歴史に残る大傑作とは言えないが、愛すべき佳品という印象だった。

主人公らの旅の目標はぶれ続ける。行く先々で新たな課題を課せられ、そして解決することなく先へと進む。欲望は満たされないがゆえに欲望であり続ける、ということを言いたかったのだろうか。平易なストーリーでありながら様々な深読みをも可能にするリブレット。一過性の娯楽よりも「この話の言いたかったことは何だったんだろう?」と謎を残すことが狙いだったのかもしれない。

何はともあれ現代音楽、こういう作品を定期にかける東響(それなりに難曲ではあったようで、一夜限りの演奏で終わらせるのはもったいない限り)もなかなか度胸があるというか何というか。第一部だけで帰る客の姿も見られたが、これで定期会員が離れないことを願うばかりだ。
posted by NA at 02:23| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(4) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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