2007年10月12日

打海文三氏死去


先日著作を読んだばかりの打海文三さんが急逝された。
以下はasahi.comのハードボイルド作家の打海文三さん死去より。
 ハードボイルド作家の打海文三(うちうみ・ぶんぞう、本名荒井一作=あらい・いっさく)さんが9日午前4時、心筋梗塞(こうそく)のため、茨城県内の自宅で死去した。59歳だった。葬儀は近親者で済ませた。(中略)
 30代半ばまで映画の助監督を務めた後、農業に転身。その傍ら小説を書き始めた。03年「ハルビン・カフェ」で大藪春彦賞。「裸者と裸者」「愚者と愚者」に続く3部作の完結編「覇者と覇者」を執筆中だった。
「ハードボイルド作家」という久しく聞かなかった呼称とともに、思ったよりも年長だったことに意外さを覚えた。作品からは想像できなかったから。
全共闘世代だったらしい。Wikipediaでは別人の項目で一瞬ちらりと名前が出てきていた。作者が誰であろうと作品は作品単体で評価されるべきだが、内乱の日本を舞台にした諸作を、かつて体制崩壊を夢見た世代のひとりの書いた小説として読めば、また違った景色が見えてくるような気がする。
あの込み入った謀略をめぐる人間模様は、何らかの体験の反映に違いない。

ご本人のブログ打海文三の”パンプキン・ガールズは二度死ぬ”に昨日、本人の書いたエントリの延長であるかのように「重要なお知らせ」と題された文章が掲示されていた。
読者の皆様

本ブログの主催者、打海文三(59歳)は10月09日(火)早朝に

心筋梗塞の為亡くなりました。

長い間のご愛読、本当に有難う御座いました。


                                  子息より
「子息」とあるのはつまりお子さんの自署ではないということだろうか。メッセージの置かれ方の無造作さ、内容のそっけなさに胸が詰まる思いがしたが、その通知は彼の乾いた作品世界に通じているようにも思える。生も死も等しく無価値であり連続している、といわんばかりに。

余談。
本名の「荒井一作」でGoogle検索したら、三鷹高校16期ホームページがヒットした。同期会住所不明者リストの中に同姓同名があったからだ。ご本人かどうかはわからないが、東京出身ということだし年代的にも一致する。彼は探されていたのかもしれない。

大好きな作家になるにはまだ時間が必要だった。だけど、独特の世界の作り手がまたひとり世を去ったことをとても寂しく感じる。さようなら、打海さん。

追記:
津原泰水さんのブログで打海さんを追悼するエントリが掲載されていた。⇒ラヂオデパートと私 - 打海文三
同時代の伴走者を悼む文章中に
血を吐くように言葉を綴って精一杯の者たちと、それを囲む予想屋やブローカーという図式がはっきりと見える。
という一節を見つけ大いに反省する。感想と称してブログで勝手なことを書き散らしている私もまた、実作者を傷つけているひとりなのだ。恥ずかしいことである。
ラベル:訃報 打海文三
posted by NA at 11:05| 東京 ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 報道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして打海文三の息子、チュウと申します。
ごめんなさい、この内容は私本人が書きました。

父の性格ならこうであろうとイメージしながら
内容をシンプルに!?書かせて頂いたのです。
一応、出版編集者の方と相談して書きましたが
「子息」はやっぱおかしいですね。
修正致しておきます(苦笑)

父の作品を読んで頂き有難う御座いました。
Posted by チュウ at 2007年10月12日 13:43
はじめまして。コメントありがとうございます。

飾りのない通達は、確かにお父様の訃報の伝え方として相応しいスタイルのようにも思えます。お父様の不在のもたらす巨大な欠落については、今後多くの方が自らの言葉を以っていくばくか埋めてくれることでしょう。

若輩者ゆえ、こういうときにご遺族にどのような言葉を送るべきかまったく見当もつかないのですが、お父様の残された作品群は今更私が何かを言うまでもなく大変ユニークなものであること、我が国の文学の歴史に確かな爪跡を残したことは間違いないありません。そういう方の家族であったことは大いに誇りにされていいと思います。ご遺族の皆様に慰めと平安がありますように。
Posted by NA at 2007年10月12日 21:33
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Excerpt: 未完の大作「覇者と覇者」の発売日まで後2日。ふと思い立ってブログを始めることにし
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