2007年06月18日

「大日本人」を観てしまった

出張先で早い時間から仕事仲間と酒を飲んだ後、中途半端に時間が余ってしまった。繁華街をふらふら歩いていたらシネコンがレイトショーをやっており、チケット1,000円である。知らない街でおかしな店につかまって万札数枚召し上げられるよりはこの方がよろしかろう、とよろよろ入館し、たまたま時間が合っていた「大日本人」を予備知識抜きで観た、という次第。
正確には予備知識はまったく皆無というわけではなくて、なんか日本人が大きくなるらしい、ぐらいは知っていたが、まあそれだけだった。

私はこの映画について何か書こうとしているわけだが、正直何を言っていいのかよくわからない。じゃ書かなきゃいいじゃん、と思うけど、このもやもやした感じを書き留めておきたかったので、行きつく先のわからない駄文をしたためているのだ。

今ちょっと検索して読んだ範囲では、この映画に対する大絶賛レビューはあまり信用ならないと思った。本来映画は映画単体として評価されるべきだと思う。「天才松本が映画というメディアであれをやったからすごい」という文脈での評価は、まあ好きな人同士で話し合っていればいいんじゃないの、という感じだ。
なぜか終盤で受けている観客が少なからずいたが、この映画で笑いが止まらなかったという人は、たぶん反省すべき何かや治療すべき何かがあるような気がする。ごめんなさいね。

でも、全然面白くなかったかというとそんなことはなくて、ふだんのテレビでの芸とは違う何かがスクリーンの上で確かに展開されていたと思う。壮大な間の悪さとでも言おうか。
それはたとえば四代目(祖父)に対する大佐藤(松本)の介護の様子をいくつかの印象的なショットで見せた後の気まずい決着のつけ方であり、インタビュアーに「正義」「いのち」の定義を求められた自衛官らの誠実で凡庸で泥沼化していく応対であり、何の権威もない神主の存在であり、急速に劣化していく終盤の特撮場面(ワイヤ見せたりセットががくんとへぼくなったり)だったりする。

映画通の人はどう観たかわからないが、私は映画館であのような物をはじめて見せられて途方に暮れた。何というか、映画というのは根底に何かしらの基盤、最低限保証されている構成があるものではなかったのか。映画が映画であるべきDNAが、決定的に欠けている気がした。大昔に「ドレミファ娘の血は騒ぐ」を観たときに感じた「何だこれは」感にも似通っていたが、一見エンターテインメントを装っている分だけこちらの方がたちが悪いと思った。
それを面白がるというのは退嬰かもしれない。だが予定調和に背を向けた居心地の悪さの中に突き落とされるのは、体験としては貴重だったと思う。正直、二度体験したいとは思わないけど。

ところで真ん中分けの金髪にニットキャップをかぶった松本の姿は、坂本龍一のいでたちの劣化コピーのような気がしたのは私だけだろうか。それに何か意味があるのかはわからないが。

というわけで私は未だにこの映画が何なのか整理できていないが、見知らぬ街で酔った夜に1,000円の出資で観るにはいい映画だと思う。意味不明な体験とはそういうふうに出会うべきものなのだろう。
それにしても、カンヌで出会った人はさぞ困ったに違いない。通り魔みたいなものか。いや、ちょっと違うな。うまく位置づけられないが、人生にはそういう一日もあるものだ、ということで納得いただくしかないのではなかろうか。

追記:
最後のアレが国際情勢のパロディなの? 全然気づきませんでした。登場する(じゅう)がそれぞれ何かのメタファーであるとか言うのもまったく想定外。そういうことを読み取るセンスは皆無だね、私は。
それよりも「締めるの獣」(だっけ)の造形が気持ち悪くてよかった。卵を産み付けるという設定に、なぜか「ガメラ対大魔獣ジャイガー」を連想したりした。幼い日に初めてみた特撮(「ジャイガー」は年齢的に封切り時には見ていないが)で感じたであろう、生理的にすごく嫌な感覚をキモ懐かしく思い出したものだった。
もしかしたらそういう映像への憧憬が、この映画を読み解く鍵だったりするのかも。
posted by NA at 00:33| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(1) | 鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
予備知識はいうのかー、すごいなぁー
Posted by BlogPetのめち at 2007年06月19日 16:32
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