2007年02月09日

社民党に期待はしていなかったけど

有田芳生さんのブログ『酔醒漫録』にて土井たか子、参議院選挙出馬へというエントリを興味深く拝読した。
社民党の土井元党首(Wikipediaによれば名誉党首らしい)がどうしようがそのこと自体に興味はなかったが、後段に書いてある内容が、そもそもの経緯からして初耳だったので驚いた。ルポライター斎藤貴男が、社民党公認で比例区からの立候補を表明する一歩手前まで来ていたのだという。土井氏らの動きが出馬断念の契機となったらしい。この内容が事実だとしたらまさに痛恨事だ。

非拘束名簿式比例代表制で行われる参院選比例区選挙は、単純に言えば知名度の高い候補ほど当選しやすくなる。古くからの社民党支持層はこぞって投票用紙に「土井たか子」と書くだろうから、全国の票を集めれば彼女は当確になるに違いない。前回2004参院選では社民党は比例区で2人当選していたから、今回もひとりかふたりは通りそうだ。増えるとは思えないが。

だが、かつて北朝鮮問題で対応を誤った党の責任者として引責し政界を退くべきだった土井氏が、衆院落選を経てなお今度は参院選に鞍替えしたところで何をできるというのだろう。昔の名前にしがみついて余命を繋ごうとする社民党の姿は見苦しくはないか。議席を得ても自民党に格好の攻撃材料を提供するだけではないのか。いや、最早相手にすらされないかもしれない。
旧態依然とした社民党が生き延び支持層を広げるためには新しい才能の台頭は欠かせない。土井氏は後進に道を譲るべきだった。目前の1議席確保よりも大事なことだと思う。

斎藤貴男の文章は刺激的だ。熱が入ったあまり独断が過ぎて時たま「ちょっとこれはどうかな?」と思える部分もなくはないが、反権力の視座を維持して正論を堂々と述べる物書きが激減した昨今、彼のように相手を恐れず渡り合えるライターは貴重だ。
格差社会などを巡って、参議院で舌鋒鋭く安倍首相らを批判する斎藤貴男議員の姿を見たかった。本当に残念極まりない。彼が政界進出の意欲を完全に失わないうちに、民主党でもどこでもいいから(新党日本?うーん)三顧の礼をもって迎えてほしいものだ。

もし有田氏のエントリに事実誤認があるのであれば、社民党は何らかのかたちでこの件に関するコメントを公表すべきだ。何の期待もしていない政党に失望しようもないが、有為な人材が国会で活躍する道を党の方針で事実上閉ざしたのだとしたら、その責任は測り知れないほど重いと思う。

追記:
有田さんのブログで社民党関係者を名乗る人物がコメントをしていたが、文中「候補者選びも基本は分権でやっているので最終的に誰が立候補するかはだれにも予測はつきません」とあったのでこれは党関係者のはずがない、多分社民党関係者を騙ったでたらめであろう、と思った。
選挙区候補にしたところで公認を出す出さないは党中央が判断するはずだ。ましてや比例区名簿登載について「分権」でやれるわけがない。勝手に名乗りを挙げて比例区名簿に載れるようだったらそれこそ一大事だ。選挙戦略のためか積年のしがらみ故かは知らないが、土井氏を優先し斎藤氏を軽んじたのは党中央の意向に他ならないだろう。もしかしたら福島瑞穂党首の与り知らないところで候補者が決まる仕組みになっているのかもしれないが、そのような放埓を「分権」と言い換えているのなら、それは悪質なごまかし以外の何物でもない。まさか天下の公党でそんなことはないだろう――と考え、でたらめと判断した次第。

再追記(2/19):
追記で「多分社民党関係者を騙ったでたらめであろう」と書いたのは私の勇み足だったようだ。詳しくはコメント欄に登場された「社民党某」さんとのやりとりをご覧いただきたいが、斎藤氏はもともと社民党組織にとって招かれざる客人だったらしい。外野の思惑はともかくとして、立候補断念はお互いにとってよかったのかもしれない。
posted by NA at 03:00| 東京 ☀| Comment(10) | TrackBack(1) | 電網 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
きょう衆院で、ひとりも提供するはずだったみたい。
Posted by BlogPetのめち at 2007年02月11日 11:59
有田さんのブログからたどりついて偶然、たどり着きました。私は、選挙の候補者選定に関係する部署ではありませんが、本当に関係者です。
本来、その立場にありませんが、たまたま発見したので、ご指摘の点に簡単に答えます。社民党の候補者の選定方法は分権でやっています。比例選については原則7人擁立の方向でブロックを割りました。例えば、九州ブロックは九州の中で話し合って沖縄から出すことを決め、沖縄の中で話し合って山内徳信さんになりました。同じ方式で中国四国が金子氏、東海が戸田氏、北信越東北が又市氏、北海道が山口氏に決まっています。
実際には本部で候補者を見つけて、引受先のブロックを探してブロック側の同意をとるという場合もありますが、それを受けるかどうかはブロックの判断です。候補者についてはいろいろ意見がありますが、責任をもつブロックがあればかまわないという考えです。もちろん公認決定は全国連合の権限ですが、基本的に現場の人選を否決することはあまりありません。よほどそぐわない人選なら中央とブロックで話し合いをすることはあります。
斎藤さんの割当は関東全域が予定されていました。土井さんは近畿ブロックの中で名前が取りざたされているようです。有田さんの書かれている情報は基本的にガセネタで、本人にはそのつもりはないようです。社民党の中で誰がいいかという話をすれば、土井さんの名前があがってしまうのはやむを得ない面があり、本気でそれを望んでいる人も多いのは事実です。そうした声をどこかで聞かれたのでしょう。
Posted by 社民党某 at 2007年02月16日 16:29
社民党某様、はじめまして。コメントありがとうございます。丁寧な説明に感謝すると共に、エントリの追記で「でたらめだろう」と断じた早計をお詫びします。

ただ、ご説明を拝読しても社民党が斎藤氏が出た場合にどこまで真面目に支援し当選させるつもりだったのか、についての疑念は払拭されませんでした。逆に斎藤氏を利用しようとしただけでは、とも思えます。
もともと立候補希望者が党関係者であれば「出たければ、どうぞ。自由にやって下さい」という姿勢もありでしょう。でも、社民党という政党が従来の支持層以外にウィングを広げようという意思があれば、また違った対応があり得たのではないでしょうか。

現在の社民党が、地域代表をその地域だけの票で当選させられるだけの力があるとは(ここしばらくの選挙結果からみても)到底考えられません。某様には申し訳ありませんが、今の社民党が参院比例区で確実に当選させられるのはひとりだけだと私は思います。非拘束名簿式という面妖な制度の参院比例区において斎藤氏が支持を頑張って集めたところで、一般の知名度が高く大量の個人票を集められる土井氏がもし立てば、結局は名簿順位では下になってしまうことは火を見るより明らかです。
斎藤氏の見込みも甘かったのかもしれませんが、「土井氏出馬」の情報(「基本的にガセネタ」だそうですが)を耳にして、ジャーナリストとしての活動を投げ打って挑むには成功率の余りに低い賭けになってしまったことに躊躇してもおかしくはないと同情します。
土井氏本人に「本当にその気がない」ことが明らかなら、斎藤氏が断念したのはまた別の理由だった可能性もありますが、噂話に翻弄されるうちに、組織の実質的支援がないまま他候補との相関で当落が決まる比例区で立候補することの危うさに、遅まきながら気づいたのではないか……とこれは勝手な想像です。

社民党がこれから先も土井氏を看板に戦い続けるのであれば、それはそれでいいんじゃないの、と第三者としては思います。土井氏がいる限りどこまでも付いていくという熱心な支持者もきっと多いのでしょう。社民党はぜひ変わらねばならない、と言うほどの思い入れは私にはありません。
Posted by NA at 2007年02月18日 23:16
ご指摘の点は概ねその通りかと思います。
ご関心はないかも知れませんが、社民党的な「常識」で言えば、斎藤さん擁立を構想し党に結びつける役割をした人がもう少ししっかりとすべきだったのだと思います。
前述しましたように社民党は共同戦線的な組織ですし、党内での斎藤さんの知名度はそれほど高くはありません。斎藤擁立が内定したといっても、当該地域(具体的には関東3ブロック)の組織自体「へー、そうですか」という域を出ていないわけです。その辺は執行部が決めれば、全体がきちんと動くレーニン主義的な組織ではないということです。具体的にいう立場にはないのですが、本人を口説いた人が口説いた段階で終っていれば、その後は何も起きません。いろいろうわさ話を聞いたり、具体的な状況を見て本人が翻意するのも十分あり得る話でしょう。
それは組織の体を成していないのではないかという批判もあるでしょうし、いろいろ問題が生じているのも事実です。ただ、私個人はそれが社民党の良さの裏返しでもあると思っているわけです。見たこともない人を執行部が候補者に決めたら、割り当てられた組織は一糸乱れず淡々と準備をすすめるとということにはならない。私の場合は組織の中にいるので、だれが候補者でも所掌する最低限のことはやりますが、それは本当に最低限で、実際どの程度頑張るかは自分自身で候補者を見たり、話を聞いたりして、判断するわけです。そういうことの総体が社民党というものです。共産党や公明党のような「党」ではなくて、どちらかというと昔の自民党や民主党に近いのだと思います。
土井さんは一定の功績があったことも事実だし、いまだに現職の一議員を超えるような強い影響力があることも事実です。折々に土井待望論が出てくること自身はやむを得ないというか、自然なことではないでしょうか。今の執行部に土井さんを看板にしようという意識はないと思いますが、功績ある先輩として遇しようとはしていますから、内部に土井さんに期待する声が出るときあえて否定したりもしないでしょう。
Posted by 社民党某 at 2007年02月19日 14:06
書き忘れたので追加です。
斎藤さんが割当を予定されていた、北関東、東京、南関東は有権者の人口比でいえば圧倒的に多く、かなり優遇された割当であったことは間違いありません。ブロック割当というのは社民党内の話ですから、実際の集票は全国が対象です。その意味でも全国から集票できる文化人である、斎藤さんにとって有利でした。獲得議席はこの間の選挙の実績だと2で、だいたい±1でしょうから斎藤さんが立候補した場合、当選の可能性はかなり高かったと思います。
Posted by 社民党某 at 2007年02月19日 14:13
再度の懇切丁寧な解説ありがとうございます。社民党という政党のあり方がよくわかりました。決して皮肉ではありません。
なるほど社民党には社民党の戦い方(選挙を「戦い」と喩えると急に時代を一気に遡ったような気になりますが)があるわけで、当事者と何の接点も持たない半可通が思いつきで口をはさむような話題ではなかったな、と反省しています。
社民党の今後のご健闘をお祈り申し上げます。
Posted by NA at 2007年02月19日 22:02
斎藤貴男さんは九条ネットを支援しています。


社民党は護憲ではありません。護憲政党なら
新社会党・社民党は統合しています。
Posted by 護憲 at 2007年06月06日 12:17
護憲さん、はじめまして。
斎藤さんも九条ネットから立候補しないんでしょうか。一度萎えるとなかなかやり直す気にはなれないと思いますが。

比例区では新党日本から立候補する有田芳生さん(http://www.web-arita.com/)らと九条ネットの天木直人さん(http://www.amakiblog.com/)らが競合することになるようです。
反与党で小党が乱立すると結局共倒れするだけでなくて与党に塩を送ることになりかねないので、ここは小異はともかく大同についてどうにかならんもんか、と選挙のたび思うのですが、主義主張を貫くことの方が皆さん大事なようなので仕方ないのでしょう。

「護憲」というスタンスについてはいろいろ考えるところがあるのですが、またエントリを改めて書ければ(しかしまとまらんだろうな)と思っています。
Posted by NA at 2007年06月06日 16:38
NAさん、たまたま「有田芳生」ブログを開いて読んでたら、久しぶりに(忘れかけていた)土井たか子が「参院選出馬?」という記事が出てたので追ってる内にあなたと社民党とのやり取りを読んできました。
小生は、もはや「社民党」や「新社会党」まして共産党にも興味なく「9条ネット」には心情的には同調しますが、今や毎日約90人の自殺とネット難民とかの報道ニュースを知るにつけこの期に及んで”最後のチャンス”であろう自民党独裁を下野させる足がかりの参院選を、荒涼として動めく生活弱者のうめきや嘆きを鈍感さで党派性(政治屋)のエゴによって、反自民独裁体制の敗北に終らせる訳には行きません。
かって「細川連立政権」のほのかな希望さえ裏切りで打ち砕いた(小生は、小沢氏の評価がどうであれ)当時の村山・土井社会党は今でも許すことはできません。(当時の社会党員の知人達はその後「社民」「新社会」には誰も行きませんでした)
第二次大戦時のヒットラー・ナチス登場を許した責任は、左派の分裂、その真っ先にスターリン派共産党、「左翼」知識人の”ソ連擁護の知性”たる堕落だと小生は思っているのですが・・。ジョージ・オーウェルやアンドレ・ジッド、サルトルみたいな行動的知識人は日本には登場し得ないのでしょうか?
Posted by 自称「小沢派」 at 2007年07月06日 16:52
自称「小沢派」さん、はじめまして。返事が遅くなりました。

94年当時の社会党が自民党に加担して非自民連立政権を崩壊させた経緯は、この国の政治にとってまったく痛恨事だったと思っています。
今更架空の前提に基づく想像をしても詮無いことですが、せめて数年間連立政権が維持されていれば、長期にわたった自民党政権に由来する数々の弊害はより早く改められていたはずです。そうなれば、少なくとも自民党はその後政権を奪還したとしても決して今のような姿ではなかったでしょう。

彼らが延命させた古い体質の自民党が、小泉純一郎という天才的アジテータのもとで衆院で圧倒的多数を獲得し、思うがままに思慮の浅い改憲論を叫んでいる状況を、社民党議員や関係者らは恥と思うべきです(旧新党さきがけOBもまた然り)。
社民党で活動している個々人の中には優れた人もいらっしゃると思いますが、組織となるとまた別の論理がはたらくのが不思議です。
将来、今の野党による連立政権が現実的になる日が来ても、彼らは重要な選択を迫られてまた間違えたりしないでしょうか。社民党がキャスティングボートを握るような機会はまず訪れないと思いますが。

私は日本の知識人に期待するところ大ですが、全体を俯瞰し考えの異なる人たちを束ねることのできる、たとえていえばベ平連時代の小田実のような存在(リアルタイムで知っているわけではないので想像です)は、残念ながら今の論壇などには見当たりません。
あるべき社会の姿を大きな構想のもとに語れるイデオローグの出現が俟たれます。

まああまりこんなことばかり考えていては独裁者を待望する心理に通じかねないので、とりあえず参院選では今あるメニューから適当に選ぶしかないのでしょう。期待しすぎず、絶望もせずに。
Posted by NA at 2007年07月10日 19:54
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