2006年11月27日

ムーンライダーズ東京公演

24日、渋谷公会堂改め今年10月からC.C.Lemonホール(なぜサントリーホールと名乗らんのだ)と改名した所で行われた「OVER THE MOON / 晩秋のジャパンツアー2006」というなんか気合の入らないタイトルのライブにいそいそと馳せ参じる。
春の日比谷野外に行けなかったので、バンド活動30周年を締めるこのライブにはぜひ行かねばの娘。

もっとも30周年を記念した祝祭的内容は春にゲストをいっぱい呼んでやりつくしたらしく(その模様は近々映画にもなる)、今回のライブはまず新作「MOON OVER the ROSEBUD」のプロモーションを前半でやり、後半に旧作を持ってくる構成だった。隠れた名曲「シナ海」や「トンピクレンッ子」を思いがけず聴けたのは大収穫。新作の「馬の背に乗れ」はライダーズを知らない若い連中にぜひ聴かせたい快作であるなあ、と思いを新たにする。
無理やり誘った連れの女子の体調が悪かった(ごめんね)のが残念だったが、スタンディングの少ない二階席でひとりで飛び跳ね絶叫しハイCで勝手にハモる迷惑な中年客と成り果てた。いやはや楽しい2時間半でした。

耳がじんじん鳴り続けの帰り道で女の子に「一番好きなバンドなんですか?」と尋ねられ、少し返答に詰まる。いいバンド、うまいバンドはほかにもたくさんあるし、音楽すべてひっくるめて言えば私の永遠のアイドルはバルトーク・ベーラただひとりだ。
出たばかりの新作はまだ馴染めない曲の方が多い。もともと外に向けてメッセージを発信するタイプの音楽ではないけど、何で古くからのファンにしかわからない仕掛けをあちこちに施すのか、と少しいらいらしたりもする。彼らの音楽性を云々する資格が私にあるはずもないけど、これから先ライダーズがどんな新曲を書いても、おそらく過去の曲ほどは愛せないだろう。

でも、聴いていて一番和めるバンドは間違いなくライダーズだ。ディスクもライブも。五十過ぎのおじさんたちが老成とは程遠いステージアクトを繰り広げる(鈴木慶一は客席に乱入して女の子たちをさらってフォークダンスしてた。まったく)様子を見ていてつくづくそう思った。
ライダーズの音楽は一言で語れない。名作も駄作も含めて、30年かかって積み上げられた色々なカラーの曲が、その日その日の気分に応じて寄り添ってくれる。離れられない。
トロツキーではないが別々に進んで共に同じ敵を撃つ仲間であり、よい歳の取り方を示す先輩(ときどき反面教師)でもある。そんな感じだ。

驚いたことに今朝の日経の1面コラム「春秋」(11/27)がこのコンサートのことを書いていたのでうれしくなってしまった。我ながら単純なものだ。
 日経ビジネス誌が「会社の寿命30年説」を唱えたのは1983年だった。明治以来の企業の盛衰を調べ上げた経験則に例外はない。組織が元気を失わず、新しい価値を世間に送り続けようと努めても「30年の壁」は非情なまでに厚い。
▼日本のロック界の草分け「ムーンライダーズ」をご存じだろうか。結成30周年を迎えた今年、その熟年の6人の活動が一段と輝いている。出発はアグネス・チャンさんの伴奏だった。テレビで知名度を高めヒットを狙うより、自分たち自身が音楽を楽しんでいるのだろう。無邪気に音と戯れる姿は子供のようだ。
▼「工場からのサイレン、川を渡る僕たち、パンをかじりながら、ほほ笑みあう」。高度成長期には明るさの中にも孤独が宿る工業都市・東京の心象風景を歌った。人が土地と株に狂った時代は活動を休んだ。不況が訪れると「幸せな家庭は、優しさの答えは、会社までの距離や食事の中にある」と哀(かな)しい声を上げた。
▼その神髄は、時代を読む呼吸と変わり身の早さだろう。新技術の電子楽器を誰よりも先に買って得意になるかと思えば、あっさり手放して素朴な音響に戻る。バラバラにも見えるメンバーが付かず離れず、必要な局面で個性を発揮する。30周年公演は全国で超満員となった。長寿の秘訣は企業経営にも通じよう。
日経の中の人にも相当なマニアさんがいたのだな。ディテールがひどく正確なあたりがとても怪しい。「30年」を無理やりキーワードにした一段落目と経済紙らしい教訓めいたオチをつけた四段落目は、まあ世間の目もあることだし仕方なかろうて。

riders.jpg次は35周年の前後でまたぱーっと活動するのだろうか。そしたら今度はCDの次世代メディアで再発ラッシュになるのかな。ともあれ私は、きっとまた彼らの愉快なライブに、同じだけ歳を重ねて行くことになるだろう。少し先を行く彼らの姿を追って。
ムーンライダーズがこの世にあって本当によかったと思う。
posted by NA at 23:55| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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