2010年07月01日

遠くまで往く

サッカーW杯の季節がやってきた。もう四年経ったのか、と、まだ四年しか経っていないのか、の二種類の感慨がいつもながら交錯する。
ただ前回あたりまでは己の進歩のなさを慨嘆するばかりだったが、今回は「間違いなく俺は四年前より劣化している」という確信がある。達観したのか、ただの退化か。

劣化のひとつが文章作成能力の衰えである。四年前あたりのわがブログを見ると、まだエントリを書くことに飽きてなかったらしくて(笑)連日のようにW杯の感想を書き連ねていた。だが今回は一次リーグが終わったあとに初エントリときたもんだ。
今回W杯も日本戦を中心にテレビ観戦していたことに変わりはないのだが、同時に開いているPCで見ているTwitterという恐るべき飛び道具の出現が、結果としてものぐさ者をいっそう筆不精にしたことは否めない。何か反応しようと思っても、一瞬いや数瞬前にどこかの誰かが自分の書こうとしたものよりもよほどうまい表現で言い切っているのだから、今更世界に余計なテキストを増やすまでもない、とすぐ諦める気になれる。

周知のとおり、日本代表は一次リーグを2勝1敗という望外の成績で突破し、昨夜決勝トーナメント1回戦でパラグアイにPK戦の末敗れた。望外というのはつまり自国民の下馬評が低かったからで、よく考えれば出場国の半分は決勝トーナメントに出られるのだからそれほどすごいことではないのだが、五月までのよれよれっぷりは相手を油断させる罠だったと言われても納得できそうなぐらい、一次リーグでの躍進は目覚しかった。本当に。
この調子で決勝トーナメントもひとつふたつ勝てるかも、という根拠薄弱なわしらの期待は、やはり根拠薄弱だけあって叶うことはなかったわけだが、それでも2006年の超期待はずれ代表に比べたら今回の岡田ジャパンは長足の進歩を遂げたことは間違いない。2002年のトルシエジャパンと時空を超えて戦っても、おそらく10回のうち5回は勝ち、数試合はドローに持ち込めたはずだ。これも根拠はないけど。

しかし、んなことはどうでもいい。久しぶりに素人サッカー談義を書く気になったのは、パラグアイ戦の結果に思うところがあったからだ。
前後半0-0で、延長でも勝負がつかず結局PK戦で白黒つけることになったいきさつはよそでしこたま美辞麗句と共に書かれているので繰り返さない。たまたまパラグアイが八強に進んだだけで、もしかしたら日本にもチャンスはあったかもしれないことは事実だ(全体としてはパラグアイのゲームではあったが)。そしてもちろん勝っていれば大喜びはしたことだろう。
ただ、たとえ勝ってもわが代表はここ止まりだったに違いない。失礼ながら、おそらくパラグアイもさらに勝ち進むことは難しいのではないか。トーナメント1回戦の他の7試合(全部フルで観たわけではないが)は、このカードの数倍高いレベルの勝負を繰り広げていたから。
文字通り吸いつくようなパスワーク、あり得ない角度で軌跡を描くドリブル、信じられない遠くから飛んでくる脚や頭がクリアするボールの弾道、そして一閃放たれるシュートの殺意の強さ。いずれもが格の違いを見せつけていた。

「火の鳥」黎明編の終盤にも似たような場面があったことを思い返す。
火山の噴火で巨大な岩穴の底に落ち込んだ青年が脱出するため岩肌をよじ登り、到達したはずの天辺がさらに高い岸壁に囲まれたテラスだったことに気づく瞬間。越えたはずの山は序の口に過ぎなかったのだ。
日本代表の旅路はご近所を出て広大な世界の地図が目に入ったところで終わってしまった。ここまで歩くだけでも本当に本当に大変だったのに。なんということだろう。

進むべき道はない、だが進まねばならない。真の頂上までの途轍もない距離を見せつけられ、なおサッカーを続けるほかない彼らがどんな絶望を抱えて日本に帰ってくるか、想像するに余りある。ドイツ大会での中田の演劇的大往生を多くの人達は笑った(私も与した)が、今となっては彼もまた大きな絶望に文字通り打ちひしがれていたのだとわかる気がする。ドイツ大会のどうしようもなく不出来なブラジル代表ですら、日本を訳もなく破ることができたのだ。

ほんとうに、あと何十回負けたら我々は強くなれるのだろう。
今回の日本代表の到達した地点が未だかつてない高みだっただけに、そこから先、遥かに見える峰の高さはあまりにも残酷だ。
彼らのここからの旅に幸いあれ、と願わずにはいられない。そして若い森本、内田、長友らが決して希望を失わないことを。
posted by NA at 01:17| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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