2009年04月28日

どこに行く「ヒメアノ〜ル」

ここしばらくの古谷作品は、主人公の設定もシチュエーションも似通っている。若かったり若くなかったりするワーキングプア男が分不相応な美人に惚れられ、並行して凄惨な暴力が描かれる。二巻まで出た「ヒメアノ〜ル」も今のところその展開を踏襲しているようだ。

もはやギャグ漫画の人ではない古谷実に、誰もが「稲中」での抱腹絶倒の再来を望んでいるのは不幸なことだ。彼が書こうとしているのは不幸と幸運が背中合わせに存在する統合失調的な世界、ジャンルはまるで違うけど後期マーラーやショスタコーヴィチの交響曲のようにけたたましく笑いながら横面を張ったり泣いたりしているような不条理なのだと思う。もっとも稲中にしてもキャラクターの常識とのずれが暴走する笑いを構成していたわけで、歯車の噛み合わない居心地の悪さや失調感というものは彼の創作に共通した主題なのかもしれない。

今回はヒロイン役が変態の殺人者に付け狙われているという設定がより闇の深さを感じさせる。ヒロインの視点からの書き込みが薄い分、厭な予感もまたひとしお。心ならずも犯罪に荷担する脇役も登場し、彼の動向も気になる。同工異曲かもしれないが、この先どうなるか興味は尽きない。
登場人物の軌跡が一点に集まってカタストロフを描くのか、はたまた交わることのないまま肩透かしを食わせるのか。雑誌連載や2ちゃんねる掲示板で展開されているであろうネタバレには目をつぶって、三巻以降に期待したい。できれば読んで驚けますように。
posted by NA at 08:15| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/118212456
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック