2009年01月23日

都響定期にまたまた行ってみた

昨年(これこれ)に引き続き、別宮貞雄のプロデュースする都響定期「日本管弦楽の名曲とその源流」シリーズを聴きに東京文化会館へと赴く。一年ぶりである。
今回は名曲の誉れ高い矢代秋雄の「ピアノ協奏曲」をやるというのでこれはこの機会にぜひ聴かねば、と思った。ちなみに客の入りは結構よかったと思う。矢代協奏曲が目当てだったのだろうか。

午後に突然降ってきた仕事のために開演には間に合わず、冒頭のダニエル・ルシュールの「舞踊交響曲」は館内ロビーのモニター(なんであんなに音量を下げていたんだろう?)で聴く。
パヴァーヌやサラバンドなど舞曲の形式による小品を集めた弦と打楽器の曲。スピーカーから漏れてくる音に耳を傾けていたが、古典的な書法の中で激しい場面には「弦チェレ」以後の音楽の感触が一瞬感じられたりもするものの、総じて魅力に乏しくまあ満足に聴けなくても後悔しないで済む感じの音楽だった。この日の三作曲家の共通因数である「フランス」繋がりできっと何かプログラムビルディング上の必然性があったんだろうけど、あまりひねらずにふつうに楽しめる曲を持ってきてほしかったなあ。


で、お待ちかね「ピアノ協奏曲」の登場。第一楽章はささくれた金管群の弱音とヴィブラフォンがつくる音の雲の中、ピアノがぽげむたぽげむたぽげぽげぽげと主題を紡ぎ、少し行って立ち止まってはまた走り出す音楽。これを若き日の麗しい中村紘子が初演したのか、と少し意外な印象を受けた。今はカレー鍋煮ながらショパンを雑に弾いているわけだけど。第二楽章は硬直したオスティナートが威圧するアダージョで、第三楽章は序奏に引き続き皆さんお待たせしましたロンドですよさあ踊れ!という構成。

何というか、非常にそつのない音楽という感じがした。ピアノのヴィルトゥオーゾ的な見せ場は随所に配置され、管弦楽との場面の受け渡しも絶妙。たぶんピアニストとしても難度は高いものの挑み甲斐のある作品なのだろう。
と言葉を濁してしまうのは、この日の体験が決して感動を伴うものではなかったからだ。管弦楽はピアニシモからフォルティシモまで懐広くスコアを再現し、野原みどりのピアノもまたよく動きよく鳴っていたが、そこには規定されたコースを定められたタイムで走りきったアスリートのような退屈さもあった。というか、おそらくこの作品をはじめとする矢代音楽は後進の作曲家らの栄養として吸収され、そのイディオムは他の楽曲に変換されて既に普及しつくしているのだろう。こういう現代音楽はどこかであったな、と思う瞬間が多々あったが、聴くべき順序が逆だったのだから仕方がない。
三善晃のピアノ協奏曲を大学生の頃に予備知識抜きで聴いたときには「なにこのすげえチャンバラ音楽w」と大いに興奮したものだった。歳を経てすれっからしになると音楽を楽しむのが下手になるようだ。三善作品の暴走よりも矢代作品が均整を選んだであろうこともまた想像に難くないが。

休憩を挟んで別宮プロデューサーの交響曲第4番「夏1945年(日本の挫折と復興)」を拝聴。標題からはどんな恐ろしい音楽かと戦戦兢兢だったが、もともとアンチ前衛の別宮先生だけあって思いの外わかりやすく明るい作品だった。というかこんなに健康優良児的な終楽章でいいんですか、と思うぐらい屈託のないつくり。物事に拘泥しない気さくなマーラー。「解放」のフーガはそりゃもう解放されるってんだからフーガだよね、という極めて明快な楽想で、最後にチェレスタなどが主題を再現するあたりは「ああ、出る出る」という終結感に満ちた幸福なクライマックスを予感させて大変よろしゅうございましたが、しかしここでもまた三善の屍体散乱する合唱入り戦争作品などと照らし合わせてしまう私はどうしてこう物事を素直に楽しめないのだろうか。我ながら損な性格である。

まあこういう機会でもなければ決して出会わなかった音楽だろうから、長期にわたってこのような地道な企画を続けている都響には大いに賛辞を送りたい。石原に負けるな。
来週サントリーホールで行われるBシリーズ第675回定期は一柳慧(「とし」でちゃんと変換できた。ATOKが偉いのか?)の出番。「循環する風景」もまた聴いておきたい作品のひとつではあったが、さてさてどうしたもんだか。
posted by NA at 03:45| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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