2008年12月11日

シフトする?自動車産業

カトラー:katolerのマーケティング言論「死んだふり?米国ビッグスリーが電気自動車で復活する日」を読んで、ホンダのF1撤退の報と重ね合わせた人は多かったのではなかろうか。すぐれて予見的な考察だった。
世界市場全体で3割減というかつて経験したことのない落ち込みという、現在進行している状況は単なる経済不況ではない。20世紀を支配した巨大な恐竜のような自動車産業が死に絶えつつあるプロセスを目撃していると考えるべきだ。もちろん、この世界から、ビッグ3やトヨタなど自動車メーカーが忽然と消えてしまうということではない。化石燃料を燃やして動力を得る「機械」としての自動車と、それを製造する産業としての20世紀型の自動車ビジネスが終焉を迎えるということだ。そうした歴史認識の下で今回の事態を見ていく必要がある。
水素を燃料とする燃料電池車が、これまでのところ次世代環境カーの本命と目されてきたが、果たしてそうだろうか。ガソリンを水素に代替えするという意味で、自動車メーカーが、現在の自動車ビジネスの延長上に考えやすかったというのが、水素カーが本命視された最大の理由だが、水素燃料を補給する水素ステーションの建設など、改めて社会インフラを整備しなくてはならず、実用化にはほど遠いことが明らかになってしまった。
それに対して、電気自動車こそ百年に一度のイノベーションとなる可能性が最も高いと考えている。電気自動車は、わかりやすく言えば、遊園地にある豆自動車やゴルフ場で動いているカートのことだ。プリウスのようにガソリンエンジンと電気モーターを複雑に切り変えて制御する高度な仕組みもいらなければ、水素を供給するスタンドもいらない。
自動車業界にとって、電気自動車の実用化は、魅力に映ると同時に、大きな脅威ともなる。というのも、ガソリン車から電気自動車にシフトすると、過去に蓄積された内燃エンジンの製造技術や高度なメカニックの制御技術の大部分は役に立たなくなるからだ。
本来、米国のビッグ3は、トヨタや日本の自動車メーカーと同様に燃料電池車(水素カー)を次世代の本命とし、現在の自動車産業のビジネスモデルを温存させたかったのだが、今回の経営危機でそのシナリオは崩れてしまった。代わって、技術的なハードルが低く、日本車に対しても競争力を発揮できる可能性のある電気自動車にシフトして、なりふり構わず失地回復に走るというのが、最優先の戦略になってしまった。
ビッグ3が電気自動車の実用化に踏み切ることになれば、世界の自動車業界、市場に決定的な影響をもたらすことになる。電気自動車は、モーターと電池と車輪から成るプラモデルのようなマシンなので、パソコンや家電と同じようにモジュール化とコモディティ化が一気に進行する。その結果、自動車産業では水平分業が進むことになり、垂直統合型のビジネスモデルで強みを保ってきた日本の自動車メーカーの優位性が失われていくことになるだろう。世界最大の自動車市場を抱える米国と世界最大の潜在市場を抱える中国が、電気自動車の普及という一点において利害の一致を見るようになったということを日本の自動車産業従事者は相当の危機感をもって見ておく必要がある。
最初から最後まで頷ける内容ばかりで、しまいには全文引用しかねないのでこれぐらいにしておこう。
業界の現状をレースにたとえれば大事故が起きてレッドフラッグが振られセ−フティーカーが出てきた頃合か。一度競争がリセットされようとしているのだろう。内燃機関の頂点を極めるべき存在であるF1レースの意義が急速に色褪せているのがわかる。
ホンダとしてももちろん経営難対策の意味合いもあったのだろうが、それ以上に脱・ガソリンエンジンの流れを逸早く感じ取って行動に移したという側面もあるに違いない。

カトラー氏も書いているように、電気自動車は交通インフラを一変させるだろう。個々の車両の運行状況をモニターして電子制御すれば事故は激減する(歩行者の飛び出しなどが原因の事故以外は根絶できよう)し渋滞もなくせる。有料道路で速度に応じて課金することも可能だ。高速道路自体不要になるかもしれない。
既に個人で駐車場をキープすることが難しくなっている東京23区からカーシェアリングなどを通じた電気自動車への全面的移行を開始(GPS制御などで運転可能エリアを限定することは可能だろう)し、都市圏から地方へと普及を進めていけば思ったよりも早く次世代交通システムへの移行は実現できるのではないか。

世界的には優位を保っている日本の自動車メーカーが今そうした変化を起こすことは難しいかもしれない。だが、新しい事業は余力のあるうちにこそ進めるべきである。二次補正だの解散するのしないので揉めている日本の今の政治にその先導役を期待するのは無理というものだろうか。道路族議員はもう要らない、交通についてのエキスパート政治家こそが求められている。

あとぜんぜん根拠なく言うけど、いずれソニーがこの分野に進出してくる可能性があるのではなかろうか。発熱回収問題ばかりが印象に残るが、これまでのリチウム電池事業で蓄積した制御ノウハウはきっと他分野で生きてくるはずだ。AIBOが自動車ブランドとしていつの日か復活する日が来たりはしないか、と想像する。
posted by NA at 08:36| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/111047908
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック