2008年08月13日

フロスト気質(R.D.ウィングフィールド (著)、芹澤恵 (翻訳))

昨日買って通勤の帰りと寝るまでと今朝の行きと昼飯時間で上下巻完読。登場人物が寝ないで働いているんだから、読む方も寝る間を惜しんで勢いよく読むべきなのだ。いやあ面白かった。

このシリーズはやっていることは毎回同じと言えば同じだ。モジュラー型というもっともらしい呼称があるが、要するにイギリスの不景気な地方都市デントンで凶悪事件が次から次へと起こり(相互の関係はあったりなかったりする)、慢性的に人手が足りないデントン警察はてんてこ舞いの大騒ぎになる。
署長であるマレット警視(典型的ないけ好かない上司キャラ)からはとことん疎まれている存在のベテラン刑事ジャック・フロスト警部(だらしない中年やもめ)が心ならずも捜査を担当する羽目になるが、このフロスト警部がまた風貌同様とっちらかった性格で、捜査現場に行く途中で他の物を見つけたり別なことを思いついたりと落ち着きのないことこの上なく捜査方針の朝令暮改は当たり前、相方役の若い刑事も読者もあちらこちらに振り回され、未解決の事件群はもつれ合ったまま一向に解決しない……という展開だ。シリーズ四作目の本作も前三作とまったく同じ道を歩む。
だが、マンネリと感じさせないのはひとえに描写の的確さとスピード感の絶妙なバランスゆえだろう。通常あり得ないテンポ(小説なので当たり前だが)で次々起きる事件事故は大物あり小物ありでバラエティに富んでおりシチュエーションも様々。それらが見事な吸引力で物語世界に読者を取り込んでしまう。原文にどう書いてあるのか知らないが事件現場や同僚とのやりとりで「ちんぽこ」その他卑語を連発する不謹慎きわまりないフロストの口調(今回は好評に応えてか「ちんぽこ」大増量感強し)も大きな魅力だ。

シリーズの中では、ラスト数行でジグソーパズルの最後のピースがぴたりとはまる第二作「フロスト日和」が随一の出来栄えだと思うが、四作中最長の分量で警察側のキャラも増量された本作も読み応えは十分だ。
もつれた糸がほどけるのがやや早めで、また着地にちょっと難があった(これで公判を維持できるのか?)のが若干惜しまれるものの、久しぶりにミステリらしいミステリを読んだ、という充足感でいっぱい。上下巻の値段以上の価値は十分ある。遅い夏休みの読書には最適、徹夜して読まれたし。
posted by NA at 17:13| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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『フロスト気質』 R.D.ウィングフィールド
Excerpt: いつのまにか出版されるのを待つシリーズの一つとなってしまったフロスト警部シリーズの最新作が『フロスト気質』。 ふざけたおっさん警部フロストのおとぼけぶりと洞察力のある捜査、親切で出世には興味ない主人公..
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Tracked: 2008-09-11 22:12