2012年09月23日

夜の国のクーパー(伊坂幸太郎)

以下は自分のための読後感。レビューをお求めの方はamazonなり何なり、他のサイトでお探しください。

大好きな作家の作品であっても趣味に合わないことはある。わかってはいるのだが、それでもこの作品には大きな失望を覚えた。うまく楽しめなくて、なんだか伊坂さんに申し訳ない気がする。面識もない相手に変な言い方だが。

約400頁の作品の四分の三までは大いに興にのって読み進めていた。旧作や名作との類似点やオマージュ(「これはたぶんガ*****記だな」と冒頭場面で予測したら案の定だった)を見出しながら、いつもの伊坂風文章を満喫できていた。
残りの四分の一とは、つまり謎解きであり伏線の回収である。伊坂作品でそこを楽しめなくてどうするのだ、まったく俺としたことが。

ひとつには喋る猫、動く木などが登場するファンタジーの世界が前半であまりに巧みに構築されていたからかもしれない。それに比して、謎解き部分で示された作中世界の現実は必ずしも愉悦に満ちたものではなかった。伏線を回収する手つきも必ずしもスムーズではなかったと思う。

情況に対して発信する作家像は今回も健在で、ことさらに大声での主張はしないものの「帰る」という言葉に込められた複数の含意は十分伝わってきた。いつもながら物語に挟み込まれた数々の箴言・警句も健在だ。朝日夕刊で連載中の「ガソリン生活」もそうだが、人間たちの右往左往を動物・無生物の視点から重層化する文章は手慣れたものだ。

なのにどうして。なんなんだこの恋の終わりにも似た索漠感は。
よくわからない。昔だったらそのオフビートさをオフビートゆえに愛でていたのではなかったのか。
私にとってこの小説は、「夜の国のクーパー」という言葉から連想される静かで穏やかな謎と恐怖を孕んだものとして展開していた、くどいようだが四分の三までは。そしてそのあとですべてが台無しになった。
どんでん返しがはまったとかはまらないとかいう話ではない。ただ、残念なのだ。
posted by NA at 03:01| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする