2009年09月10日

捕手ほど素敵な商売はない(松下茂典)

捕手出身の名監督二人(森祇晶と野村克也)を主人公に、戦後のプロ野球史や戦術論、野球業界の裏話などを様々に語る趣向。読書情報誌での連載をたまたま読んだときは、紹介されていた個々のエピソードがとても面白く感じた。だが単行本になってみると、何だかまとまりがなくて読みづらさを覚えた。本を構成するのはむずかしいものだ、とつくづく思った。

それほど厚い本ではないが情報量は豊富で、当事者の発言もあるいは秘話に属するものが数多く含まれているのであろう。腹心だった森の西武監督就任を阻止しようとした広岡達朗の裏工作の話などは初耳で意外だった(プロ野球通には広く知られた話なのかもしれないが)。森・野村寄りのスタンスからの著作ゆえ、登場人物の白黒がはっきりしているのも本書の特徴ではある。

森と野村というキャラクターはそれぞれ屈折していて魅力的だが、どちらかひとりだけの話を一冊読むのはよほどの通でなければしんどそうではある。それゆえ共通項でくくって一冊の本にするという企画になったのだろう。しかし主人公をふたり立てたために叙述の視点移動が頻繁に起き、結果として先に書いたような散漫な印象をもたらしたことも事実だ。タイミングが微妙にずれている両者の選手時代の活躍を等分に描写しようとして年代を行ったり来たりするのは、あまりいい工夫ではなかったと思う。
クライマックスの日本シリーズ対決も、もっと紙幅を取って書き込んでほしかった。
posted by NA at 01:34| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする