2009年09月01日

ガンダムを見に行く

二年前から延々継続していたプロジェクトがようやく終わった。気がつけば八月も晦日になっている。どたばたと銀座のビストロでチーム員と打ち上げ兼送別会(終わりを見越して翌日付で人事異動させられたメンバーも数名いた)を開き、ひたすらワインの栓を抜く。

プロジェクト自体は、いくつかの大きな損失発生、志と異なる仕様変更の数々を度外視すれば成功という毎度ながらの煮え切らない結末だった。世の中そうそううまくはいかない。
ただ、今回は遂行のプロセス全体を可視化できるように交渉の過程や行政、取引先などによる紙資料もすべてフォーマット化して徹底的に一元管理することを心がけた。ふつうの会社ならば基幹システム刷新の際に実現していそうなことではあるが、上下関係に基づく旧態依然の馴れ合いとニコポン主義で運営されてきた我が社にとっては、この程度でも現場にとっては大変革ではあり抵抗も強かった。とりわけ地方営業所の年嵩の連中は書面で報告を出すことを嫌がり、パソコン操作を「できない」と抛り出す始末。深夜に電話で個別サポートを求められ、「ではcコロン円マーク……」「なんやコロンって。さっぱりわからんわ」と不毛な会話を繰り返す羽目になった。

まあいい。とりあえず仕事は終わったのだ。そして誰ひとり休みを取れなかった夏もとうに盛りを過ぎて、季節は秋との間の曖昧な何ものかに移り変わっていた。
ビストロで数十人で始めた宴会はバーにはしごしてラーメンを食べる頃には男女四人にまで減っていた。零時過ぎ。だが何か物足りない。プロジェクト完遂の興奮が冷めず名残惜しい。酒や飯はもういい。今から盛り場に移動して踊るには我々は疲れすぎている。我々の居場所はどこにあるのか。

ガンダムだ。きょうが公開最終日だった」ひとりが突然そう叫ぶ。タクシーで行けばすぐの距離。夏の終わりのガンダムか。
「公園の中に立っていたんだよね。まだ解体されてない?」
「わからん。でも造るときにも脚から少しずつ、結構手間取っていたみたい」
「今から入れる? 閉まってない?」
「表から撮った写真とかもあったと思う」
「とにかく行ってみようよ。ダメもとで」
大学生でもないのになんだこの会話は。そうだ、俺たちにはガンダムがあったのだ。

潮風公園は幸い閉鎖されていなかった。探すことしばし、検索するとどうやら等身大ガンダム像は「太陽の広場」なるところに建てられたらしい。
暗い公園をそぞろ歩きする四人。なんだ真夜中過ぎなのにこの人通りの多さは。なんだこの期待の高まりは。
女の子が悲鳴のような声を上げた。木立の上に何かが突き出て見える。走り出す。
視界が開けた。

gundam.jpgガンダムはそこに待っていた。
東京湾の夜景を背に、微動だにせず(当然だが)。思っていたよりも大きく、量感は圧倒的だった。
「でけー」
「すごーい」
間抜けだがそれ以上の言葉は出てこない。皆呆けたように見入るほかなかった。別にガノタでもないのに、涙が出そうになった。
アニメーションの中で誰かが想像したものが、実体としてそこに存在するということ。単純なその事実がこれほどまでに感動的だとは思わなかった。

日蝕。らりピー事件。総選挙。あと何があったんだったかな。すべてそっちのけで仕事に明け暮れた夏の最後にガンダムを見た。何の脈絡もないけど、終止符の打ち方としてこれ以上のものはなかったと思う。2009年の夏は、夜景の中に浮かび上がるガンダムの姿と共に永く記憶に残るだろう。
posted by NA at 13:00| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(1) | 日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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